PLMの「L」とは?

※本記事は、2018年7月11日にAras Corporation MARK REISIGによって投稿された記事を和訳したものです。

多くの企業が設計におけるPDMを経て、企画・設計から保守サポートに至るまでのライフサイクル管理を行えるPLMへの移行に苦労しています。PLMの“L”に何が起きたのでしょうか?製品ライフサイクル管理(Product Lifecycle Management)におけるライフサイクル(Lifecycle)とは、最終的には、企業がデジタル化により事業を変革し、複雑化する製品に対応していくための鍵となります。「L」なくしては、継続的なフィードバックのループやデジタルスレッド、工場を出てからも進化し続ける製品の完全なトレーサビリティはありえません。

PLMの定義は、生まれてから廃版になるまでのライフサイクル全体を通して製品のあらゆる情報を管理することです。「L」はよく、コンセプト、デザイン、製造、保守などの異なるステージを示す水平線上で描かれます。業界および特定の業務上の慣習によってそれらのステージは異なる場合もありますが、PLMによって、他のソフトウェアも含めてライフサイクルの各ステージと業務プロセスとを繋げることができるため、ライフサイクルのどの場面でも、製品データにアクセスし、また、情報を蓄積していけるようになります。「L」がなければその接続性はなく、設計の領域をなかなか抜け出せないPLMの前身、PDM(Product Data Management)のようなものです。

多くの企業が、1990年代に第1世代のPDMを導入しました。1980年代のライフサイクルステージを参照できるにもかかわらず、ほとんどのPDM導入は、CAD図面管理やエンジニアリングにおける部品の構成管理を対象としていました。これには、バージョン管理、変更管理、CADへの連携、技術仕様、EBOMやMBOMなどの製品構造との関係を含んでいました。しかし、PDMがライフサイクルステージを参照できるという事実にかかわらず、PDMはエンジニアリングツールにとどまり、ERPやCRMツールと同様、エンタープライズシステムを意図するPLMの一部となりました。

新製品を開発しては廃版にしていく時代は終わり、あたかもPLMであるかのように仕立てられたPDMシステムもそれと共になくなりました。製造業は「製品の長い人生」を重視しなければならなくなり、PLMベンダーはそれに応えなければ淘汰されることになります。

企業はデジタルトランスフォーメーションの最中です。より複雑で、コネクテッドで、パーソナライズされた製品の需要が高まり、製造業は自社の製品ライフサイクルを最初から最後まで管理できるデジタルプラットフォームを使用するようになっています。製造業は競争に勝ち抜くため、複数分野での同時作業、可変要素のコントロールが求められるようになる他、フィードバックや製品見通し、トレーサビリティ、出荷後のアップデートなど様々な情報と接続されたデジタルスレッドにわたる製品構成を管理する必要性、そして継続的なイノベーションの必要性など、様々な対応が求められているのです。

スコープの肥大化や稚拙なデータ戦略など、多くのPLM導入に関連してこれまでに問題があったことは間違いありません。そうなると、エンジニアリングの中だけしか使われなくなるなど、企業のPLMジャーニーは徐々に終焉を迎えます。Aras導入とアップグレードのスピードに関しては、多くの評価があります。 CIMdataによるArasのPLMプラットフォームに関する評価: カスタマイズとアップグレードの再定義

完全なPLM機能を有しないPLMベンダーもいる、ということをもし私が今まで言及してこなかったとことについては申し訳なく思います。最近まで、「PLM」というワードは口にしていながら、多くの人が同じくその事実を述べてきませんでした。2017年に「デジタルツイン」や「デジタルスレッド」と検索しても、どのPLMベンダーサイトでも表示されることはありませんでした。これは、機能するPLMシステムに必要な要件をPLMベンダーが理解すべき、というだけの話ではありません。

間にあるソフトウェアモジュールによってPLMシステムを妨げないようにすることも重要です。これは、ベンダーバイアスが原因でよく見られる間違いです。訓練を受け、最高の技術とベストプラクティスのみを使用することで、最も柔軟で最適なエンドツーエンドのライフサイクル機能が実現できます。

柔軟なアーキテクチャと幅広い業界の標準サポートにより、Aras Innovatorはますます多くの企業のPLMバックボーンとして機能します。 - CIMdata

PLMに関しては、これまで立ち上がり「この壁を壊す!」と宣言した人はいませんでした。統合という形でERPに対して「壁の上から投げ込む」ような方法をとるのであれば、それは単なるPDMです。残念ながら、私はIoTにそれを見ていますが、本質的にデジタルの崖を踏み外していると言えます。その代わりに、組織内のサイロ(特にERPとの相互作用)から稼働中の製品のデジタルツインまでを通して、エンジニアリングに適用される同じCM2の厳格さがデジタルスレッドに必要とされます。デジタルスレッドを最適化する企業による推進力の欠如が、「L」に起きた致命的な失敗のひとつです。

製品の複雑さが増すことを考慮すると、孤立したサイロでの作業はできなくなり、市場投入までの時間は短縮されます。製品開発は、もはやハードウェア、ソフトウェア、テストのような連続的なアクティビティではなく、むしろ相互に繋がりあった同時並行のプロセスです。つまりPLMは、エンジニアリングだけでなくライフサイクル全体にわたって、複数の分野に対応するため変革を行う必要があります。これには、変動性を制御するためにより多くの先行、下流、および複数の専門分野のシステムズエンジニアリングが必要です。これがライフサイクルプロセスの一部でない場合、トレーサビリティはほとんどなく、サプライチェーンやサービスを際限なく複雑にしてしまいます。

デジタルで繋がっている企業は、製品と顧客の関係を再定義することができます。過去には、アイディエ―ションは本質的には多くの仮説から成る未知の領域でしたが、顧客を含む多くの視点が欠けていました。今では、IoTデータを含むデジタルツインと継続的なフィードバックループを備えたデジタルスレッドとして機能する、複数分野のエンドツーエンドPLMイノベーションプラットフォームを用いれば、企業は仮説を検証し、イノベーションを加速し、さらには出荷後も改善し続けることができるようになります。私はさらに、製品のライフサイクルはもはやゆりかごから墓場までの直線ではなく、幾重にも重なる円で顧客の周りを反復するものであると主張します。始まりと墓は、一方が他方に融合するにつれてぼやけ始めます。この反復ループはアジャイル開発を可能にし、イノベーションを加速し、新製品導入のリスクを低減します。競合他社から抜きんでるメーカーは、顧客よりも先に彼らのニーズを把握しなければなりません。そのためには、もはやPDMを使用している場合ではなく、ライフサイクルを通じて製品に繋がっている必要があります。

デジタルトランスフォーメーションを実現し、市場に出てからも製品の構成と複雑さを制御するには、エンドツーエンドの製品ライフサイクルが必要です。デジタル時代では、スマートでコネクテッドな製品の登場により、ライフサイクル全体にわたる組織のサイロの製品データをデジタルツインに集めることが重要です。私は、複数の分野の閉ループ製品ライフサイクルシステムを網羅する、オープンで柔軟性があり、拡張性があり、アップグレード可能な製品イノベーションプラットフォームが必要であると考えています。これにより、プロセスは継続的に最適化し、企業のエコシステムはハイパーコネクテッドに、製品の革新は加速し、エンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスが向上し、運用の柔軟性・効率は向上します。

私はあなたの「L」を見つけることをお勧めします。そして常に、ご意見をお待ちしております。