【CSMS第9回】150% BOM

アラスジャパンの久次です。

ものづくりにおける“サイバーセキュリティ”のブログシリーズ第9回として、 今回は150% BOMの活用について触れてみたいと思います。


150% BOM

150% BOMとは、ATO(Assemble To Order)やETO(Engineering To Order)などの個別受注製品のバリアントBOMに対して使われている言葉です。ATOの場合は互換性や組合せの種類を、ETOの場合はカスタム要件及びオプションやカスタマイズ可能な部品の組み合わせを、バリアントとしてBOMに持たせ150% BOMとして構築します。
製造可能な組み合わせを150% BOMとして、準備し受注した仕様を入力すると、ルールに応じて必要な部品の組み合わせが抽出され、製造可能な製品構成が100% BOMとして作成されます。

  • 150% BOM : 互換性やオプション及び組合せ条件などを含めた、構成することが可能(Configurable)なBOM
  • 100% BOM : 受注条件や仕様に合わせて構成済み(Configureed)のBOM

従来は、個別受注生産における工場で組立に必要な部品構成(BOM)を指示する仕組みとして使われていましたが、最近では設計開発の領域にも使われ始めています。

プロダクト・ライン・エンジニアリング:PLE


製品開発では、開発した機能や資産を有効活用するため、派生機種やシリーズ製品の開発を行う事がよくあります。派生機種やシリーズ製品の設計では、開発済みのコア機能や共通ユニットはそのままに、様々なオプションを付加することで製品バリエーションを増やし、市場における製品の付加価値を向上させたり、開発期間やコストの削減を行うことが出来ます。
この様な開発手法はシリーズ製品開発やプロダクトラインエンジニアリング(PLE)と呼ばれており、プロダクトラインを跨いで共有して使われる部品の情報を統合管理するため150% BOMが使われています。特徴のあるコア機能や実績のある共通ユニットなど、再利用可能な機能を使いまわすことで開発期間の短縮やコスト削減ができるだけでなく、トレーサビリティを確保しメンテナンス性の向上を実現することも可能です。

設計領域で150% BOMという言葉が使われ始めた背景には、自動運転やIoT製品など、メカ、エレ、ソフトが密接に関係する製品開発において、MBSE(Model Based Systems Engineering)手法を用いてプロダクトラインを俯瞰する製品アーキテクチャの設計から始めることが多くなったことが挙げられます。自動車のスイッチやリモコン、アクチュエーターなど見た目は少し異なっているが機能などは共有化されているものが多数存在ます。流用されているコア機能や共通部品の設計変更を行う場合、担当している機種だけでなく派生機種への影響も考慮しなければなりません。派生機種やシリーズ製品へのトレーサビリティを確保し、影響度を把握できるようにするには150% BOMを活用するのが有効です。

ソフトウエア・プロダクト・ライン・エンジニアリング : SPLE

部品の共通化はソフトウエアの世界にも浸透してきています。ソフトウエアの世界のPLEでは、再利用を前提に共通化するコアのプログラムを設計したのちに、様々なアプリケーションでコアプログラムの流用を行います。既存のプログラムを流用をする派生開発と区別し、SPLE(ソフトウエアプロダクトラインエンジニアリング)開発と呼ばれたりしています。コアプログラムを含めた機能を150% BOMとして統合管理し、仕様に合わせて必要なプログラム機能を選択し、抽出された100% BOMを使ってソフトウエアのアーキテクチャを設計する場合などに使われています。ソフトウエア開発の世界でも150% BOMが重要になってきた背景には、車載電子システムの機能安全規格 ISO26262における電子システムに対する安全上のリスク回避や低減、ISO/SAE 21434のCSMS/SUMSにおけるソフトウエアの安全性確保が喫緊の課題として注目が集まり、仕様変更時における影響度を正しく判断し、不具合発生リスクを抑えることが求められているという背景があります。

要求事項や設計意図を知る

この様にPLEや派生、シリーズ製品の開発を進めるに際し部品が共有可能かを判断するために、機能に関する情報だけでなく、当該機能を採用するに至ったそもそもの仕様に関する要求事項や目的にまでさかのぼって情報を共有することが重要です。機能に関する記述だけでは共通化ポイントを見つけることが難しいだけでなく、変更における影響度などを判断する為に、要求事項までさかのぼり、仕様決定にまつわる意図が理解できれば、共通化の切り分けや変更への影響などを理解しやすいという事が分かってきました。サイバーセキュリティにおけるソフトウエアアップデートを安全に実施するためには150% BOMを整備し、プロダクトラインにまたがるソフトウエアの変更を安全かつ効率的に実施できる環境が求められています。

*注:150% BOMや100% BOMだけでなく120% BOMなんて言葉も出てきています。100% BOMが実際に組立可能なの製品構成を表すのに対し、120% BOMは同一製品内のバリエーションの選択肢を含むBOM、150% BOMがプロダクトラインを跨ぐオプションを含めたBOMと考えると良いでしょう。

次回の記事もぜひお読みください。



「ものづくりにおける“サイバーセキュリティ”」ブログシリーズ 目次
 第0回:ものづくりにおける「サイバーセキュリティ」とは? ~イントロダクション~
 第1回:IoT製品開発におけるサイバーセキュリティへの取り組み
 第2回:自動車におけるサイバーセキュリティ 
 第3回:サイバーセキュリティのマネジメント 
 第4回:サイバーセキュリティのマネジメント(その2)
 第5回:サイバーセキュリティにおけるデジタルツイン
 第6回:なんとか In the Loop
 第7回:着眼大局
 第8回:Single Source of Truth
 第9回:150% BOM
 最終回:ものづくりにおける「サイバーセキュリティ」とは? 〜おさらい〜