【CSMS 第5回】 サイバーセキュリティにおけるデジタルツイン



アラスジャパンの久次です。

本日は、ものづくりにおける“サイバーセキュリティ”のブログシリーズ、第5回として、 サイバーセキュリティにおけるデジタルツインについてお届けします。


サイバーセキュリティのバリデーションを考える場合、”脅威に対する防衛”に対してだけでなく、”製品の安全保障”に関しても、実際に試作品を作成するのではなく、デジタルツインを活用してテストや検証を進めるのが効率的です。

Gartnerによると、IoT製品に取り組んでいる75%の企業ではすでにデジタルツインの活用を始めているか、1年以内に予定しているとのレポートがあります。しかし実態を見てみると、ほとんどのプロジェクトではパイロットフェーズにとどまり本番活用に至っていないと言われています。



活用されないデジタルツイン

ソフトウエアベンダーは「3Dモデルのフル活用でDXを実現」とか「3Dデータの製品ライフサイクルに亘る有効活用で、エンジニアリング改革を推進」というメッセージを出しており3Dデータ=デジタルツインのような錯覚を与えています。

皆さんのイメージする”デジタルツイン”とはどのようなものでしょうか?


GEが提案するIIOTのデジタルツイン活用事例では、タービンから送られてくるデータから稼働時間や故障頻度のデータを収集し保全作業の効率化を図ると共に、デジタルツインを使って将来起こるであろう故障を予測し事前にメンテナンスを実施することで運転停止時間を最小化し最適な運用の実現を目指しています。


デジタルツインに含まれる3Dデータはシミュレーションモデルとして活用され、想定される稼働時間や故障頻度を元に応力や振動、熱解析を行い、性能の変化を分析します。3D形状は解析のメッシュを作成するのに利用されますが、製品の将来予測を行う為にはそれ以外の情報も必要です。設計目標として定めた稼働条件や製品仕様としての諸元値、過去のテスト結果や出荷時の実測結果など様々な値(パラメータ)を使いながらシミュレーションの結果を判定する必要があります。

またソフトウエアの変更による電流・電圧の変化が、回路における仕様の範囲に収まっているのかを判断したり、過去の要求仕様を振り返り当時想定されていた利用環境の諸条件を確認するなど、デジタルツインを使ったバリデーションには複数の設計領域をまたがる関連情報が求められてきます。タービンの様に何十年も稼働し続ける製品の場合、当初想定されていた利用条件を逸脱して運用され続けられることも少なくありません。


デジタルツインプロジェクトの多くがパイロットフェーズ止まりになっている原因の一つとして、3Dデータ=デジタルツインと限定して取り組んでいることが上げられています。


ライフサイクルに亘り形を変える部品表

デジタルルツインとは、実際に稼働している製品に関わるデジタル情報のことを言います。
この中には機械的な情報だけでなく、電気/電子的な情報及びソフトウエアに関する情報なども含まれています。

3Dデータは部品表で管理されている一要素でしかありません。部品表には3Dデータだけでなく、要求事項や解析結果、製品スペックなどが関連づき管理されています。
部品表は設計段階の製品構成(部品表)だけでなく、構想段階の製品構成や生産段階の構成、運用時の構成など、製品のライフサイクルに亘っていくつかの異なる形体を持ちます。
前出のタービンの場合、工場出荷時の製品構成だけでなく設置場所に応じたオプションやアダプターの種類、故障により取り換えた部品情報と合わせ、設計当初予測されていた範囲内における故障なのか、想定外の利用による故障なのか等、問題解決に必要な情報を集めるにはライフサイクルを遡って情報を追っかける必要が出てきます。


<フルライフサイクルデジタルスレッド>

製品情報を繋ぐデジタルの糸

ソフトウエアアップデートにおけるサイバーセキュリティのバリデーションを行うには、ソフトウエアの変更と連動して変化するデジタルツインが持つパラメータ値を追いかけ、製品安全が保障できるのかを判断したり、セキュリティホールからの攻撃シミュレーションを行い、パラメータが閾値を超えるのかを見てリスクを判断していきます。
この時、製品構成や3Dデータ、諸元値および客先での導入構成や工場出荷時の製品構成、企画と要求事項など、対象となる製品に関わる様々な情報を集める必要がありますが、これらの情報を繋ぐデジタルの仕組みを”デジタルスレッド”と呼んでいます。





次回の記事もぜひお読みください。


「ものづくりにおける“サイバーセキュリティ”」ブログシリーズ 目次
 第0回:ものづくりにおける「サイバーセキュリティ」とは? ~イントロダクション~
 第1回:IoT製品開発におけるサイバーセキュリティへの取り組み
 第2回:自動車におけるサイバーセキュリティ 
 第3回:サイバーセキュリティのマネジメント 
 第4回:サイバーセキュリティのマネジメント(その2)
 第5回:サイバーセキュリティにおけるデジタルツイン
 第6回:なんとか In the Loop
 第7回:着眼対局
 最終回:ものづくりにおけるサイバーセキュリティとは
 ※掲載順序、タイトル、回数などは今後変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。

Anonymous