2018年PLM動向予想の結果は?

ーJason Kasper, アラス米国本社プロダクトマーケティングマネージャ ブログ訳文

 

2018年製造業界のテーマは、群を抜いて目を引く革新的な製品やビジネスモデルを創出することによって、どのように自社の製品に適応し、差別化を図ることができるかということでした。

さらに弊社顧客製造企業は、新たな製品の複雑さを支えるには、従来の業務フローでは、プロセスの破綻、解決能力の欠如、リソースのギャップなどの深刻な問題を発見する可能性があることを認識されていました。その結果、製造企業は、既存のPLMプロバイダが提供できなかったことから、自社のビジネスを管理するための新世代のPLMの必要性を認識され、その技術およびプロセスを再活性化する事に着目されてきました。

製品がますます複雑かつ高度になるにつれて、状況がどのように進歩したかを把握するため、2018年の予測がどうだったかを振り返ってみたいと思います。それにより、製品ライフサイクルを取り巻くいくつかの大きなトピックスや新たな手法が、製品の複雑さにどのように貢献、アプローチできるかという視点で考察します。昨年の年初に提示された4つの予測を見てみましょう。

予測#1 PLMはイノベーションのための企業プラットフォームになる

ERP、CRMなどのエンタープライズシステムとの連携をより深めていくために、最先端の企業が社内およびサプライヤーとの連携を深めていくことを期待していました。それが、競争優位をもたらすデジタルトランスフォーメーションとして会社に貢献します。

この予測は、約25%正しかったといえます。この動向は成果を上げつつありますが、PLMがエンタープライズ・プラットフォームになるにはより多くの時間と推進力が必要になります。私たちは確かにその方向に向かっています。なぜか? Aras、Dassault、PTC、Siemensの4大PLMベンダーはすべて、今年、製品ライフサイクルの設計、製造、サービス段階で作成された貴重なデータを活用する買収や製品開発を通じて、「イノベーションのための企業プラットフォームになるPLM」を提供するための投資に一歩踏み出しました。

まず、Siemensはローコードアプリケーション開発企業:Mendixを買収しました。Mendixの製品戦略は、エンタープライズの従業員がアプリケーションの開発をスピードアップするためにアプリケーション配信プロセスに参加することを可能にすることです。これにより、エンタープライズに対するアプリケーションの速度を高めることができます。

設計に特化したプラットフォームのもう一つの例は、製造業のERP企業であるIQMSをDassaultが購入したことです。この買収により、Dassaultは中小製造業にプラットフォームを拡張し、設計、製造、ビジネス・エコシステムを運営するビジネス・オペレーションの改革支援に乗り出しています。

ArasPLM Platformは、顧客企業のサプライヤーネットワークにまで情報を共有しています。当社のSecure External Accessを活用し、安全なセキュリティ環境下で、PLM機能をメーカーのパートナーおよびサプライヤーにも提供しています。

この機能により、製造企業のエコシステムをPLM情報に接続し、知的財産を管理するための高度に安全なアクセス制御を提供します。

複雑な製品を取り巻くデータにアクセスする価値が高まるにつれて、PLMは、顧客資源管理や企業資源計画ソリューションなど、他のソリューション分野にもさらに活用されることが期待されます。

予測#2:製品の複雑さが株価に影響

主力製品の複雑さが株主価値に影響をもたらすでしょう。すなわち、次世代製品を開発するという約束を果たした企業には報酬が与えられ、それを達成するために必要なものを過小評価した企業には説明責任が課せられるという事です。

この予測は100%正しいといえます。当時、我々は担当組織が製品の複雑さに備えておらず、株主価値にマイナスの影響を及ぼす可能性があると仮定していました。しかし、既に現場で製品から得られるデータの価値を認識し、その保護に大きな進展をもたらし、株主価値の保全に努めている事例もありました。

例えば、世界最大の農業機械メーカーJohn Deere社は、製品から生成されたデータに基づいて顧客に提供したい知的財産およびサービスを保護するために、国ごとに迅速に対応しています。最近、彼らは“本質的に、John Deere社のみが、自己診断およびメンテナンス修正の推奨をすることができます。”とコメントしている通り、いくつかの主要な競争を勝ちぬいています。

自動車産業では、将来に備えて、急速なペースで変革が起きています。大手企業からの今年の発表は、自主的、接続的、そして電気的な将来に向けて、製品の複雑さのトランスフォーメーションが始まったことを示しています。株主の価値にマイナスの影響を与えてはきたが、この新しいプロダクトミックスに対処するには、大規模なOEMs企業がスケーラブルに複雑な製品を構築できる将来に向けて、従来のビジネスモデルとプロダクトミックスを崩壊する一歩を踏み出すでしょう。

予測#3:デジタル・ツイン、マーケティングからモノづくりへ

デジタルツインがどんなものか-どんなものではないか-の正式な定義、そして価値を創造するユースケースが最終的に確立されます。デジタルツインは、ある時点で製品を記述する一連のデータセットおよびコンテキストを最終的に伝達しなければなりません。顧客からの想定される質問は、「デジタルツインは、設計、製造、維持している資産の正確な構成を教えてくれますか?」です。

予測は正しくありませんでした!デジタルツインがどのようなものであり、製品ライフサイクル全体で価値を創造するためにどのように使用できるかについては、依然としてあまりにも多くの混乱があり、あまりにも不明瞭です。これはまだ現実的な製造手法とはなっていません。なぜか? 現状は、既存のソリューションと能力に基づいて、将来のビジョンのみが語られています。残念ながら、ほとんどのデジタルツイン・プロジェクトは、パイロットプロジェクトのみでの試用となっています。

良い例としては、設計段階中に作成されたシミュレーションモデルがデジタルツインであるという考えです。これは不正確であり、デジタルモデルは、現場で動作するときだけでなく、製造プロセスを経た後の物理的製品との正確な比較として関連性が残ることはありません。シミュレーションモデルのパフォーマンスが現場で何であるかを反映するのに必要なコンテキストを提供するために、シミュレーションモデルの設定にはあまりにも多くの変更が生じます。

なぜ?製品は同じ方法で製造・維持されていないからです。物理的製品のコンフィギュレーションは、それらが構築されるとき、それらが出荷されるとき、それらがインストールされるときに変化します。これらは、試験後に変更することができ、構成は、連続した作業および保守活動を通じて変更されます。そのため、第1の優先事項は、コンフィグレーションハウスを順序正しく取得することです。2019年には、デジタルツインとその機能に関する当社の見解の詳細についてお届けします。楽しみにお待ちください。

予測#4。MBSEの勢いはシステムエンジニアリングの人材不足を招きます。

複雑な製品を製造しているメーカーは、早期設計を加速するため、ますますモデルベースに転換しつつあります。

航空宇宙・防衛産業によって開発されたMBSEは、自動車・産業製造業で勢いを増しています。良いニュースMBSEは、システムレベルの設計を可能にし、分野横断するコラボレーション的な設計を行えます。悪いニュース経験豊富なシステムエンジニアの人材不足は、最初のこの勢いを妨げるかもしません。

最初に、ちょっと楽しい事実です。この予測は正しかったようで、雇用関連のジョブリスト検索エンジンである” Indeed” は、必ず「システムエンジニア」をコマーシャルの検索バーに入れてしまいました。

さらに、ArasのカスタマコンファレンスACE、ACE Europeでもご覧いただいているように、ユーザ講演では、これまで以上に「V図」を活用し発表されていました。なぜか?製品の複雑さが増大し続けるにつれて、製品を設計するために使用されていた従来のツールでは、製品カットができません。システムを管理し、競合するためには、製品のライフサイクル全体を通してシステムの挙動と設計を検証する必要があります。これらすべてが、今年のシステムエンジニアリング人材の需要増大につながり、間違いなく近い将来も続くと思われます。

システムエンジニアリングの課題詳細は、当社ホームページ をご覧ください。

2018年後も、製品の複雑さは加速し続けるだろう。

2018年は、製品を提供するフィールドを変更する製造企業が台頭した年でした。市場をリードするソリューションを作り出すために必要な多くの分野の設計を効率よく管理するには、PLMを新たに着目する必要があることを認識する年でした。

2019年の新たな課題は次の通りです。世界的な経済成長が危うく、コスト削減の時代に定着する可能性が出てくると思われます。したがって、状況が厳しくなるにつれて、どのような製品とそれらに関連する品質およびイノベーションを提供できるかによって、どの企業が引き続き生き残るかを決定するでしょう。プロセスとテクノロジーのギャップに対処し、PLMの活用をさらに拡張されたいと考えている製造企業が、PLMを真に理解しているベンダーと協業することにより、複雑な製品開発・早期市場投入を行えるでしょう。

PLMプロダクトイノベーション・プラットフォーム・アプローチをPLMに取り入れている当社顧客企業からどんな最先端のイノベーションが提供されるか、今後もPLM市場動向を観察していきたいと思います。